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いい時は最高、悪い時は最低

名より実を取るマッシモトーキョー振り返り

元カノ談義

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マッシモトーキョー


現在J1リーグで指揮を取る監督のうち、東京で監督経験がある指揮官は2名いる(篠田さんは現在清水のヘッドコーチなので除外。)

 

1人目は広島の城福監督。「自分としてはきれいに別れたつもりだったけど、相手はそうは思っておらず、なんとなく暗い思いをいまだに抱いていると人伝に聞いた」まぁ途中解任2回だから仕方ないと言えば仕方ないけど。

2人目は名古屋のマッシモ監督。「大人の付き合いで逢瀬を重ねるものの、ある日スパッと別れる。別れた後もなんとなく自分の周りにいて時々目が合う」目が合うだけでなくひどい仕打ちもしてくるけどな!

 

東京はそんなマッシモ率いる名古屋を、今週末(注:2020年8月15日)ホームで迎え撃つ。マッシモが東京で指揮をしたのは、2014シーズンと2015シーズンの2年間。マッシモ時代の東京は未経験なことが色々続いた2年間だった。

 

 

カルチョの国からコンニチワ

マッシモが東京の監督に就任した経緯は、当時の立石強化部長がイタリアで指導者ライセンスを取った時に同じクラスだった(卒業後も連絡を取り合っていた)からだ。単にコネがあっただけではなく、イタリアでの指導歴(ACチェザーナなど:長友が最初に移籍したクラブ。)も評価されていた。

 

マッシモのおかげで今まで気付いていなかったサッカーの楽しさを改めて知った」という趣旨のコメントを高橋秀人がしていたことがある。それ以外にも、監督は引き出しが多い、状況に応じたポジショニングが数センチ単位で指定されて新鮮な感じだなど、当時の東京の選手はマッシモの指導の綿密さを好意的に受け止めて吸収していた。

マッシモは東京にとって2人目の外国人監督。1人目のガーロの時は、それまでの堅守速攻からポゼッションへ目指すサッカーが180度転換で選手が付いていけず暗黒時代を招いたが(ガーロのパーソナリティもあっただろうが)、とりあえず今回はそれは避けられそうとホッとしたのを覚えている。

 

 

名より身をとるウノゼロの美学

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戦術武藤


マッシモの指揮の元、東京は綿密な守備を構築しリーグを戦い始めた。サッカーは相手より多くのゴールを奪わないと勝つことはできない。そのためにまずは相手にゴールを取られないことが最優先

相手ボールの位置を起点にブロックを敷き、ともかくペナルティエリアへの侵入を許さない。まずは守備、次に守備、その後も守備。

OKミステル、それは分かった。しかしそれだと引き分けばかりになる。攻撃はどうする?攻撃なんて才能のある選手に任せればいいのだ、それいけ縦ポン戦術武藤!こうして東京は「勝つ時は1-0。引き分ける時は0-0」という試合を重ねていった。

 

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当時ゴール裏で出されたマッシモの弾幕


それまで「やられたらやり返す」という出入りの激しいサッカーを支持していた我々にとって、「華はなくても勝ち点は積み上がる」というウノゼロの美学は新鮮だった。また元々ドM気質が根底にあるので、ジリジリとした気持ちで試合を見ることに慣れていたのも大きい。他のクラブからすれば東京のサッカーはつまらないと思われていたかもしれないが、名より実を取ることで万年中位の指定席から脱しつつある高揚感の方が当時は優っていた。

 

 

フロントは納得のいく説明をしろ!

2014年は9位で終わるものの、2015年は4位。2015年の総合4位勝点63(注:2015年は2ステージ制)は当時のクラブ記録で、リーグ最終戦鳥栖戦で勝利をしていれば3位となりチャンピオンズステージにも進めたのにという好成績だった(3位ガンバ大阪と勝ち点は同じだったが得失点差で4位になった。)

https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2015/11/22/kiji/K20151122011556410.html

 

しかし東京はマッシモとの契約更新を行わないことを発表。報道された未更新の理由は「方向性の違い」。クラブのこの決断について「フロントは納得のいく説明をしろ!」というネット論客の皆様の声が多数上がった。歴代最高の成績を残した指揮官をなぜ?と口泡を飛ばしたくなるのは確かにそうだろう。正義は自分側にあると思い込む時ほど、激しく相手を問い詰めるような言葉を使いたくなるからね。

 

当時の立石強化部長は「2年でタイトル取れなければ監督は交代する」というポリシーを持っていたので、単にそれに従ったとも言える。クラブ運営の当事者ではないので憶測に過ぎないが、マッシモと契約更新をしなかった理由としては以下のものが考えられる。

 

 

①守備戦術だけでは優勝はできない

守りに注力することで歴代最高順位を得た。しかしリーグ制覇をのためにはそれだけでいけるのか。ある程度点を取らないと優勝はできない、そのための指揮官はマッシモではないという判断。

 

U-23に対する見解の相違

東京は翌2016シーズンからU-23J3に参戦させて、育成型クラブを目指す方針だった。しかしマッシモは若手育成のためには他のクラブにレンタル移籍させた方が良いという方針で、クラブの方針と噛み合わなかった。

 

③ファミリーを抱えるためのコスト

監督の年俸だけでなく、ヘッドコーチ、GKコーチ、フィジカルコーチなどマッシモファミリーを抱えるためのコストが財政上の負担だった。また外国籍選手獲得のためにマッシモと関わりのある代理人を使わざるを得ず、その手数料もバカにならないコストだった。

 

それでも光り輝くマッシモの功績

「ブルゴーニ爺さん(GKコーチ)がブチ切れて途中退団したのはなぜ?」や「権田が移籍することになったのはなぜ?」など良いことばかりじゃないのも確かだが、マッシモが東京に守備戦術という新しい考えをもたらし、歴代上位の戦績を残した功績は変わらない。

マッシモは東京退任後、鳥栖→名古屋の監督を歴任しており「Jリーグである程度の成績を残せる実績のある監督」として遺憾無くその指揮力と就職力を発揮している。有能な監督であることに間違いはないのだ。

 

そんなマッシモと対峙する東京ですが、試合終了後の室屋移籍セレモニーでなぜか「ボンジョルノ!」とイタリア語がスタジアムに響き、上空を飛ぶヘリから何かが飛び降りてくる・・・ということを期待してやみませぬ。

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写真はイメージです